アメリカ、ユタ州北部にあるグレートソルトレイク。その中には、巨大な渦巻き状の道のようなものが存在しています。実は、この塩の湖の中に横たわる不思議な陸地は、「スパイラルジェッティー(らせんの桟橋)」と呼ばれるアート作品なんです。
このスパイラルジェッティーは、アメリカの芸術家ロバート・スミッソンが1970年に製作しました。
彼はランドアートの芸術家としてとても有名な人物です。ランドアートとは、岩、土、木、鉄などの自然の素材をい、地面に作品を作り上げるアートのことをいいます。
スパイラルジェッティーは、大きさは約460mもあり、Google アースでも見ることができるほどの大きさです。
この不思議な「らせんの桟橋」があるグレートソルトレイクは南にはオカー山脈があり、かつては淡水湖のボンネビル湖の一部でした。この湖は、その名前の通り塩水湖で、海水より高い塩分濃度の水で満たされています。
スパイラルジェッティーは、グレートソルト湖の6550トンの岩や土砂、岩塩から作られています。2台のダンプカー、大型トラクターなど使って作られたこの作品は、たった6日間ほどで完成したそうです。
湖面が赤く染まっているのは、湖水の中のバクテリアの影響です。なんとそのバクテリアはスパイラルジェッティーを徐々に分解していっています。また、この湖は年によって水位が大きく変わり、水位が約1280メートル以下になった時のみ、スパイラルジェッティーが出現するのです。
作者のスミッソンは「一時的にしか存在しないもの」に魅力を感じていました。まさにスパイラルジェッティーはその象徴なのです。
スパイラルジェッティーが作られた1970年は水位が記録的に低い年だったそうです。完成されてから間もなく水位が上がり、その後約30年間水の中に姿を消していました。そして、2002年頃に長い沈黙を経て再び姿を現したスパイラルジェッティーは、湖水の塩分の影響で真っ白に塩を吹いています。近年になってから、干ばつの影響もあり水位が下がっているためその姿を見ることが多くなってきています。しかしまた湖の中に姿を隠してしまうかもしれません。
スパイラルジェッティーへは、ソルトレイクシティから車で2時間半ほどで行くことができますが、途中からは舗装のされていない細い砂利道を長く走り続けなければいけません。
しかし、作成されたときから少しずつ姿を変えていく姿は、まさに自然の時の流れを表し、自然のはかなさを感じることができる貴重な存在なのでしょう。
湖が干上がった状態のときには、スパイラルジェッティーのすぐ横を歩くことができます。ピンクがかった水、白い塩の結晶、そして黒い岩々のコントラストは自然の美しさとスミッソンがつくりあげた芸術性を感じることがで
きるはずです。グレートソルトレイクという雄大なキャンバス上に描かれたらせん状のラインは、単純でありながら自然と調和する美しい曲線なのです。
作者のスミッソンは35歳の若さで亡くなってしまいましたが、このスパイラルジェッティーは今もなおランドアートの代表的な作品として世界中で高い評価を得ています。
自然の中に作られた雄大でかつ繊細なアート、スパイラルジェッティー。いつか朽ちてしまうアート作品は人々を魅了し続けています。実際に訪れたら、その姿に神秘的な魅力を感じることができるでしょう。
スパイラルジェッティー(Spiral Jetty)への行き方
日本からソルトレイクシティは直行便がないため、シアトルかサンフランシスコで乗り継ぐのが一般的です。所要時間は約11時間。ソルトレイクシティにこんな絶景があるなんて、全然知りませんでした。ビックリ!
出典:wondertrip