ポルトガルの首都リスボンにある世界遺産で、登録名があらわしているように、ベレン地区にある『ジェロニモス修道院とベレンの塔』を対象としています。

16世紀にが西欧で最も美しい街と称えられた『リスボン』は、「7つの丘の街」と呼ばれる坂の多い港街です。
白亜の大理石造りの『ジェロニモス修道院』は、「ポルトガルが誇るマヌエル様式建築の最高傑作」とも称されています。2層造りの回廊の壮麗さは、ヨーロッパの中でも有数で、大航海時代に貿易による巨富を手にしたポルトガルの繁栄ぶりを伝えています。

建設を命じたのはポルトガル王マヌエル1世で、その目的にはエンリケ航海王子の業績を称揚する意図などが込められていました。

テージョ川に突き出た5層造りの城塞が『ベレンの塔』です。船の見張り台であるとともに、1階は潮の満干を利用した水牢でもありました。

ジェロニモス修道院と同じく、建設を命じたのはマヌエル1世で、ヴァスコ・ダ・ガマの業績をたたえる目的をこめた灯台でした。当時のリスボンでは、英国やオランダの海賊に対する備えが必要だったのです。
航海に関する事物をモチーフとした装飾があしらわれたマヌエル様式建築の傑作のひとつで、作家の司馬遼太郎はその優雅さを「テージョ川の貴婦人」と評しました。