聖地キャンディ（Sacred City of Kandy） ～スリランカ～

シンハラ王朝最後の都

スリランカの中央、標高304メートルの高地にある、1474年～1814年までのシンハラ王国の都『キャンディ』（Kandy）。
周囲を山々に囲まれた盆地に広がり、シンハラ王朝の最後の都として栄えた古都です。
『キャンディ』は紅茶の産地として知られていますが、「仏歯寺」（ぶっしじ）（Temple of the Tooth Relic）（正式名は「ダラダー・マーリガーワ寺院」（Dalada Maligawa））などの寺院や美しい街並みなど、見どころが多い街で、キャンディの街全体が世界遺産として登録されています。
キャンディの中心部は落ち着いた雰囲気で、「キャンディ湖」という人造湖のほとりに整備された街並みが広がり、コロニアル風の白い壁の建物が多く建ち並んでいます。

1815年、スリランカはイギリスの植民地となり、シンハラ王国は滅びてしまったため、キャンディは王国の最後の都となりました。
しかし、王権の象徴であった「仏歯」は守られ、今でもキャンディは「聖地」としてスリランカの人々の心の拠り所となっているのです。
キャンディ湖南側の小高い丘「レイクビューポイント」からは、湖と仏歯寺のすばらしい眺めが楽しめます。

街のシンボルである「仏歯寺」（正式名：ダラダー・マーリガーワ寺院）は、スリランカ一格式のある寺院。
紀元前6世紀にインドで荼毘にふされた仏陀の左の糸切り歯（犬歯）が安置されています。
4世紀にインドからもたらされた仏歯は、聖なる遺物として王家に受け継がれ、かつての王達も城を移す際はまず仏歯を納める寺院を決めてから遷都したそうです。そして、最後にキャンディ湖畔に佇む仏歯寺に落ち着きました。
仏歯は、スリランカの王族によってインドから持ってこられたのですが、その様子を表すレリーフや壁画などがあります。

中に仏陀の座像が鎮座している八角形のお堂は、シンハラ建築独特のものです。
仏歯は7重になった黄金の舎利容器に納められていて、二重の屋根がかかっている位置に安置されています。
参拝者は1日3回の「プージャ」（礼拝の儀式）に列を作り、ほんの数分間だけ小窓から見える舎利容器の姿を拝みます。
上半身裸の男性が奏でる『ボラネーク』という伝統のラッパのような楽器と太鼓の音を合図に銀の扉が開かれ、宝石がちりばめられた黄金の舎利容器を拝むことができます。
観光の場合も、この時間を目指して仏歯寺を訪れ、供物をささげる儀式や祈りの様子などを見学しましょう。
（写真はNGなので、ご注意ください。）

どこかで聞いたことがあるような仏教の音色と、人々が祈りを捧げる様子が、厳かな空気を生み出します。
キャンディは、スリランカの人気観光スポットである「シギリヤロック」（Sigiriya Rock）と並ぶパワースポットといっても過言ではありません。

シンハラ王朝の栄光の都だったキャンディには、王朝の滅亡を経てもなお、仏教への心が深く根づいています。
仏教国スリランカの信仰の中心地であるキャンディ。そこには、古きよき伝統を守り続ける人々の暮らしが残っているのです。