あれはなんだ??
漬物用大根の生産量日本一を誇るのは、宮崎県です。
その中心的な産地のひとつで、毎年冬になると話題になるのが「田野町」。
何が話題かというと・・・
田野町にある畑のあちこちで見られる、巨大な『大根やぐら』です。
収穫された大根が、高さ6メートル、長さ50メートル、棚数10段ほどの竹で組んだ
「やぐら」に、葉っぱがついたままの姿で掛けられています。
畑の中に『大根やぐら』がそびえたつ姿は、遠くからでも確認することができます。
こうして、大根がびっしり干されている『大根やぐら』の光景は
田野町の冬の風物詩として人気で、観光名所として訪れる人も多い話題のスポットなのです。
冬になると、宮崎県南部にある秀峰「鰐塚山」(わにつかやま)(標高1118メートル)から
「鰐塚おろし」という寒風が吹き下ろします。
『大根やぐら』に掛けられた大根は、この「鰐塚おろし」と天日に1週間~10日ほどの間、
さらすことで、ほどよい甘さと歯ごたえのあるおいしい「干し大根」へと生まれ変わります。
朝、収穫された大根は、お昼にはもう「やぐら」に干されます。
夕方には夜露や雨よけのシードがかけられ、夜は冷えすぎないようにストーブを焚きます。
そして、翌日はまた朝から大根を掘り、お昼には干してきます。
だから、田野町の大根農家の冬は大忙しなんです
こうやって「やぐら」に掛けられた、まるまると太かった大根は、
だんだん「しわしわ」で「ひょろひょろ」になっていきます・・・
なんと、干された大根の体積は、最初の10分の1ほどになっているんだそうです
こうしてできた干し大根は、田野町名産の漬物に加工され、全国に出荷されます。
田野町内には、約300基のやぐらがあるといわれますが、
これだけの数の「やぐら」がこの一帯にだけ集中しているのは、田野町の恵まれた気候によるものです。
鰐塚(わにつか)山から吹き下ろす寒風(鰐塚おろし)に加えて、冬の間雨が少なく、
大根を傷める氷点下にはならないという、理想的な条件に見事に合致しているんだそう。
また、土壌は黒色火山灰で、黒ボクや赤ホヤが多く、肥沃な弱酸性の土壌も大根栽培に適しているそうです。
(「黒ボク」も「赤ホヤ」も土壌の種類)
田野町は、土地も大根栽培に理想だということなんですね。
『大根やぐら』の始まりは昭和35年代と言われていて、その当時は杉などの木材を
使用していたそうで、現在使われているような竹が主流になったのは、昭和38年頃だそうです。
もともと、宮崎県の『大根やぐら』は、鹿児島県の大根やぐらを真似て建てられましたが、
それがだんだん地域に合わせて改良され、現在の形になったと言われています。
竹の組み方にも工夫がされていて、単に三角形に組んでいるのではなく、
やぐらの外側にも竹を組んで、内側と外側の竹の間にブルーシートがはさめるように
なっているんだそうです。
雨が降ったり、気温が0℃になるような時、ブルーシートでやぐらを覆います。
雨が当たると菌が発生して、大根が変色してしまうそうで、夜露や雨から大根を守る知恵ですよね
また、気温が氷点下になりそうな時には、やぐらの中でストーブなど暖房をたいて、
干し大根が凍るのを防ぎます。これも、大根の品質低下を防ぐためです。
こんな冬の風物詩、絶景が楽しめる、宮崎県の田野町を、ぜひ訪れてみてください。