容赦なく泥を塗られる!
ワーワー、キャーキャー、悲鳴を上げながら逃げまどう。
沖縄の島々の中でも、特に海が美しいと言われる宮古島の島尻集落で行われる
『パーントゥ』という厄払い神事です。
パーントゥ祭りが開催される宮古島北部の島尻地区までは、
宮古市内から車で約40分。
そして、このお祭りは、国の重要無形民俗文化財に指定されています。
お祭りの正式名称は「パーントゥ・プナハ」、
宮古の方言でパーントゥは「鬼や妖怪」、プナハは「悪霊払いの祈願のお祭り」という意味です。
3人の屈強な神様は暴れ放題で、誰かれかまわず泥をつけまくります。
一度狙った獲物(?)は絶対逃がしません。
「パトカーを呼んで!」と言ったところで、おまわりさんや取材カメラマンにだって
容赦なしなんですから。
シイノキカズラの蓑を巻き、恐ろしい仮面をつけ、泥を全身に塗ります。
ボロ雑巾のような姿からは強烈な臭いも漂ってきます。
パーントゥたちは大股でゆっくり歩き、いつの間にか近寄って来ます。
時には、2体のパーントゥに挟み撃ちに合うことも
全身に塗る泥は、宮島小学校の東側にある「ンマリガー」(産まれ泉)と呼ばれる泉の底に溜まっているものです。
「ンマリガー」は特別な泉で、その昔、産湯には必ずこの泉から汲んだ水が用いられていたそうです。
全身に神聖な泥をまとい、そのありがたい泥を容赦なく人々に塗りたくります。
泥を塗ることで悪霊祓いをすると共に、無病息災を願う神事。
その儀式が、島尻地区に受け継がれる伝統行事『パーントゥ祭り』なのです。
そう、泥を塗られることにご利益があるのです
おわかりのように、パーントゥはお化けでも妖怪でもありません。
人々の無病息災を願う、神様の化身なのです。
泥が乾いて効力が落ちたと見るや、取って返してたっぷりと補充します。
襲われて泣くのは、大人の恐ろしさをまだ知らない赤ちゃんだけです。
逃げまどう人々に、容赦なく異臭を放つ泥を塗りたくるパーントゥ。
でも、人々は悲鳴をあげつつも、どこか楽しそうです。
特に子どもたちは大興奮
縦横無尽、自由自在に動き回るパーントゥと、まるで鬼ごっこをしているように、
大はしゃぎしています!
パーントゥの泥塗りの対象は、人だけではありません。
家や車にも泥の洗礼は浴びせられます。
もちろん、レンタカーだって例外ではないのです。
同様に、地元の人々だけでなく、観光客にも容赦はありません。
これが、お祭りの醍醐味であると同時に、「悪霊祓い」のご利益なのですから。
したがって、パーントゥ祭りに参加するつもりで、宮古島を訪れる場合は、
泥を塗られて汚れることを覚悟して、服装やカメラの対策はしっかりとってくださいね。
この「ンマリガー」から取られた泥は強烈な臭いで、
もし塗られたなら、数日はその臭いが取れないので、ご注意ください。
ただ、残念ながら、「レンタカーを汚された」とか、「泥を塗りたくられた」など、
最近では観光客とのトラブルが増加しているそうです。
参加してみたいと思われる方は、単なる興味本位ではなく、
これはれっきとした「厄払い神事」であることを、きちんと理解した上で、宮古島を訪れるようにしてくださいね。
最近は、このようなトラブルが増えたため、直前まで日程が発表されなくなってしまいました。
しかし、例年10月の週末に行われているようです。
もし、この時期に宮古島を訪れて、滞在中にパーントゥ祭りが開催される場合は、
滅多に見ることのできない、宮古島に伝わる伝統文化を堪能されてはいかがでしょうか?
もちろん、その場合は、汚れるのを覚悟の上で
こんな伝統文化が体験できる、宮古島をぜひ訪れてみてください。
★『宮古島』への行き方
宮古島へは、沖縄本島から飛行機で約50分(約290キロメートル)。
羽田空港や関西空港からも直行便があり、アクセスがとても便利です。
羽田空港から
直行便は、全日空と日本トランスオーシャン航空の2社が運航しています。
所要時間は約3時間。
関西空港から
直行便は、全日空が運航しています。
所要時間は約2時間30分。
那覇空港から
直行便は、全日空と日本トランスオーシャン航空の2社が運航しています。
所要時間は約50分。
石垣島から
直行便は、全日空と琉球エアーコミューターの2社が運航しています。
所要時間は約30分。