【旅行のプロが選ぶ 死ぬまでに絶対行きたい世界遺産100】87.アブシンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群(エジプト)
1960年代、ナイル川流域にアスワン・ハイ・ダムの建設計画が持ち上がったのですが、このダムが完成すると『ヌビア遺跡』が水没する事が懸念されました。そこでユネスコが、「ヌビア水没遺跡救済キャンペーン」を始めた事がきっかけとなり、世界遺産条約ができることになったのです。
今回ご紹介する、「アブシンベル」はカイロから南へ1,180キロメートル、アスワンからさらに南へ280キロメートルのところにあります。
世界遺産に登録されているのは、エジプト南部、ナイル川流域にある古代エジプト文明の遺跡で、『アブシンベル神殿』、『アブシンベル小神殿』、『切りかけのオベリスク』、『クヌム神殿』、『ナイロメーター』、『岩窟墳墓群』、『聖シメオン修道院』、『イシス(フィラエ)神殿』、『カラブシャ神殿』などですが、メインとなるのは『アブシンベル神殿』です。
一枚岩の砂岩を彫り出した、第19王朝ラムセス2世の座像(高さ20メートル)が神殿入口に4体並ぶのが『アブシンベル神殿』です。
「大神殿」の四体の像はラムセス2世で、その前に並んでいるのは家族の像です。奥にはプタハ神、アメン・ラー神、ラー・ホルアクティ神、そしてラムセス2世の像があります。
像の脚には、ヌビア遠征に赴いたギリシャ人傭兵による古代ギリシャ語の落書きが彫られています。
壁には、神聖化された聖なる船の前で儀式を行う場面が描かれています。浮き彫りに王の業績、北の壁にはカディシュの戦い、南の壁にはシリア・リビア・ヌビアとの戦いが描かれています。
「小神殿」は、ハトホル神と王妃ネフェルタリに捧げられた神殿。立像が6体あり、そのうちの4体は王、2体はネフェルタリです。脇には王子と王女を配置しています。
この世界最大の岩窟神殿を5年の歳月をかけて1万6000個に分割解体し、60メートル上方へ移設することの成功。
現在では、アスワン・ハイ・ダムの建設によってできた人造湖のナセル湖のほとりにたたずんでいます。
この神殿では、年に2回、神殿の奥まで日の光が届き、神殿の奥の4体の像のうち、冥界神であるプタハを除いた3体を明るく照らすようになっていて、観光客の目玉となっています。
古に思いを馳せて、光のあたる像を見たいものですね。